遂にやっちまいました。
事の発端はポロトークをしようということになり、少人数でサイゼリアに向かったことにあります。
話が弾み、赤ワインがすすみます。
あっという間に、一瓶を空けてしまいました。
もちろんそれでは満足できない人達ばかりでしたので、デキャンタをオーダーしました。
それが二、三度続き、もう満足となった時、それは来ました。
帰る間際のお手洗いは僕にとって習慣になっていて、この日ももれなくそのような流れになりました。
所定の位置につき、スタンバイすると満足感が胃の奥から込み上げてきます。
しかし、我慢できる程度だったので、そこは踏ん張ります。
「あ〜今日もよく飲んだなぁ〜。」
と思いながら、排水を始めます。
6割ほど終わった頃、クラリと来ます。
「うわぁ、フラフラやわ〜よう飲んだなぁ〜。」
しかし、その揺れが治まりません。
「あれ、あれあれ?うわ、倒れそうや!今倒れたらヤバいで!」
そう、まだ最中だったため、この状態で倒れることは絶対に避けねばならぬと、僕の理性が排水をできるだけ早く終わらせようとしました。
排水完了とともに、迅速かつ丁寧に蛇口をしまい込みます。
その瞬間、壁に手をつきもたれかかりますが、ふと過去の記憶がよぎりました。
「壁に手をついて支えただけじゃ、絶対倒れる。前々回はそれでぶっ倒れて頭打ったんや!」
そう前々回は、銭湯で湯から上がり脱衣所に向かう途中、意識がぶっ飛びました。
クラリときた瞬間、壁に手をつき支えていたのですが、健闘むなしく頭をパチンコのようにどこかに3回ぶつける音と振動がして、ようやく目が覚めました。
そんなことがあったものですから、今回は四つん這いになろうと思いました。
毎日掃除されている床ですが、毎日使われている床でもあり、少々ためらいましたが、状況的にいわゆるビンチだったので、そこは我慢しようと思い、しゃがもうとした瞬間、クラリが波のように襲ってきました。
倒れる方向も予期せぬ方向だったので、耐えれたのか耐えれなかったのかわかりませんでした。
しかし、両膝を強打。
今回、目の前は真っ暗にはなりませんでしたが、何も考えれない状態で、今何をしているかも把握できていないのに意識がある、そんな感じです。
ホントはとてもしんどくて横になりたかったのですが、それだけはいけないと思い必死で耐えました。
ここで横になったら後世まで語り継がれると思い、身体にチカラを入れます。
しかし、健闘虚しく、もうひとりの自分が妥協案を出してきました。
「ケツならいいんじゃないかい?」
「そうやなぁ、床が濡れてなければケツだけ。。。アリやなぁ。」
と、欲望に弱い奴が出てきました。
その間、約3秒だったと思われます。
濡れているかどうかもしっかり認識できないまま、「ここ濡れてなさそう」と、ケツをつき座り込みました。
少し回復すると、今の状況を少しでも変えようと考えた結果、便座に座ることを決意します。
その立ち上がりから、数歩の移動で右足がおかしくなっていることに気づくのですが、その時はまだ意識が朦朧としているうえ、お酒も入っていましたので足への心配は後回しになりました。
便座に座ると少し安心したのか、目をつぶりました。
いつもより、意識の戻りが遅いのは酒を飲んでいるからなのか、など思いながら、回復に努めます。
そうこうするうちにリキさんからお呼びがかかります。
なかなか戻ってこない酔っぱらいを呼びに来てくれました。
『アーサー大丈夫〜?他の人トイレ待ってるよ〜!』
くぅ〜そっちか〜、と思いつつ「大丈夫っす!すぐ出ます!」と返答。
助けてリキさん!と言いたかったのですが、そこは僕も男です。
何度もお酒の件で迷惑をかけられないと思い、自分で何とかしようと思いました。
しかし、便座に座ってからというもの一向に回復する気配がありません。
ずーっと、ダルいままで、このままここにいても時が過ぎていくだけで、挙げ句の果てには汗をかき始めました。
つつつっーーーと、暑くもないのに汗が上から下に流れます。
いよいよヤバいんかと思った瞬間、また、リキさんからコールが入ります。
『アーサーホント大丈夫?』
声色も集中力の高まった感じで、トーンも高めです。
僕は、「ひーーっ!ヤベぇまた怒られる」と思い、「途中で倒れるかもしれへんけど、とりあえずここを出よう、後はなるようになるやろ」と決意し、僕のろう城がトイレだったということを他の人にアピールするために水を流しました。
こんな非常事態ですら、周りの目をちょっと気にする器の小ささは、意識が薄れてもなお健在です。
最短距離でドアに向かい、転けないようにしっかりと地面を噛み締めて、歩きました。
おそらく、周りから見たらフラフラだったと思いますが。
席に着くと、直ぐさま横になりました。
「みず・く・だ・さ・い・・・・バタっ」
アツコ選手が水を持ってきてくれました。
『アーサー顔真っ白だよ〜。』
と衝撃の事実が告げられます。
やはり、血が頭部から無くなっていたんだと思いました。
『指ツッコんでさぁ、出してきたらいいじゃん!』
と楽しそうな笑顔のアツコ選手。
「うん、うん、そうだね。(そういうことじゃないんだよ!)」
と、色々あった事をなかなか話せずに、回復待ちで退店とあいなりました。
リキさんには意識が飛んだことと足をひねったことを告げ、タクシーを呼んでもらいました。
いや、ホントにひとりだったらと思うと、ゾッとします。
介抱して頂き、ホントありがとうございました。
谷内家には感謝してもしきれないくらいの恩ができてしまいました。
この御恩は少しずつ返していこうと思います。